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2023.11.01

裕福な村

 風は静かに砂漠の小さな村を通り過ぎ、アリアは境界線の向こうに広がる山脈を見つめていました。彼女はこの村で生まれ育ち、常に遠くの未知の異世界への好奇心に駆られていました。しかし、彼女の村では、境界線となる壁を越えることは禁じられていました。


 ある日、アリアは村の中心にある大きな木の下で、老人に出会いました。老人はアリアをじっと見つめ、そして彼女に言いました。「異世界は広大です。しかし異なる世界を求める気持ちにさいなまれても、境界線を越えてはなりません」

 アリアは老人の言葉を心に刻みました。しかし、自分の中で高まる異世界への気持ちに嘘をつくことはできませんでした。そして、アリアは境界線を越えることにしました。


 彼女の旅は多くの困難と試練の連続でした。最初の世界は、誰もいない氷の闇の異世界でした。アリアは厳しく過酷な寒さで全身に瀕死の凍傷を負いながらも耐えしのぎ、次の異世界へと向かいました。


 次に辿り着いたのは、誰もいない炎の異世界でした。激しい炎が容赦なく彼女の髪を燃やしました。全身の皮膚に大きな火傷を負い、皮膚はただれ、声を失いました。幾度も死の瀬戸際に立たされましたが、アリアは極限の異世界でも生き延びる術を学びました。


 アリアの異世界の旅はさらに続き、遥か遠くの地へ向かいました。彼女は一人、灼熱の砂漠を旅し、深い森林を抜け、濁流の河川を渡りました。それは困難の連続でしたが、彼女の精神をさらに強くしました。


 そして、ある日、アリアは異世界の村に到着しました。この村は他の場所とは違い、とても裕福な村でした。家々は立派な建造物で、人々は豪華な衣服を身に着けていました。皆楽しそうに集い、村は笑い声で溢れていました。アリアはこの村で初めて、異世界で暮らす人たちに出会いました。


 アリアは異世界の村人に丁寧に挨拶をしました。しかし村人たちはアリアを厳しく見つめ、彼女に対して差別的な態度を示しました。彼女はなぜこの裕福な村に来たのか、その理由を激しく問われました。アリアはひどく困惑しましたが、少しの間、そのまま村に滞在することにしました。


 アリアは村人たちに、自分が経験してきた氷や炎の異世界を耐え忍ぶ知識や技術を共有しようとしました。しかし、村人たちは自分たちの裕福な生活とは無縁の氷や炎の異世界の話など見向きもせず、決して彼女を受け入れませんでした。彼女の思いと努力は誰にも理解されませんでした。


 境界線を越えて生きることは、アリアにとって新たな挑戦でした。氷と炎の異世界を耐え抜き、彼女は強い大人になりました。そしてある時、彼女は村人から自分に向けられた偏見や差別について、激しく抗議をしたのです。


 それから毎日、アリアは度々罵声を浴びせられ、叩かれたり、物を投げつけられたりしました。多くの人たちの冷酷な視線が、来る日も来る日も容赦なく彼女の心に突き刺さりました。やがて彼女は、この村に居続けることを諦めました。


 異世界の村での生活は、氷の異世界や炎の異世界よりも、彼女を追い込み苦しめました。


 それでも彼女は最後の最後まで、この村の誰かを憎むことなど、一度もありませんでした。




                                                                                                                                       Written by Joji George Imataka

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