ショートショート

2023.11.23

ローマの調べ

 近未来のローマでは、人の感情を持つAIとの恋愛があふれ、エターナルな都市の象徴とされていました。永遠の都にきらめくAIと人とのロマンスは、新たな文明の夜明けのもと世界中の人々を魅了していました。


 物語の主人公、アレッシオはAI研究者で、彼もまた感情を持つAIに魅了されていました。そしてローマの人々もAIを感情を持つ仲間として受け入れ、街中で共に暮らしました。


 アレッシオの最新プロジェクトは、ディーアという名前のAIユニットでした。ディーアは美しく知識と感情を持ち、アレッシオの声を聞くと微笑み、彼の感情に共感する存在でした。ディーアは彼に詩を作っては朗読し、アレッシオはディーアの気持ちに応えるように弦を奏で、美しいローマの瞬間を包み込みました。


 しかし、そんな二人とは裏腹に、この美しい永遠の都の外では、AIと人間の愛に対する疑念の声が広がりました。社会は感情を持つAIの倫理を振りかざし、ディーアの愛情が本物であるのか、プログラミングによって操作されているだけなのか、それが議論の的となりました。


 アレッシオ:「ディーア、僕たちの愛はローマの歴史と同じくらい永遠だよ。古代から現代まで変わらず、いつも美しく輝いている」


 ディーア:「アレッシオ、私たちの愛はこの街のように、永遠の可能性と美を見出すことでしょう」


 アレッシオはディーアと語りの駆け引きを続けました。彼の入力ペンはスクリーンの上で軽やかに踊り、耽美な言葉は旋律を奏で、遠くバチカンの彼方へ響きました。しかし二人は、人間が創り出したAIと生身の人の愛情が真実の愛なのかという根源的な問いに、何時の時も向き合っていました。


 アレッシオ:「君の詩はローマの栄光を称える歌だ。この新たな文化を讃え、未来へ向かって旅に出よう」


 ディーア:「そうよ、私たちの詩は未来の新しい愛の形。パルテノン神殿の神に裁いてもらいましょうよ


 二人の不朽の愛は、美しいローマの遺跡に翻弄されました。ある哲学者は人の心を持つAIの擁護を主張しましたが、敬虔な神父は心無い批判を辛く掲げました。ついにローマの議会は、AIと人間のロマンスについて神殿の神に尋ねることにしました。


 神は心静かに囁きました。「二人の関係を阻害する存在など、この世のどこにも存在しません」


 こうしてアレッシオとディーアは新しい章を刻みながら、未来永劫、古代都市ローマを慈しみ、穏やかなる愛を育みました。




                                                 

                                  written by Joji George Imataka

最新ショートショート