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2023.11.25

占い師

 中世のヨーロッパに小さな美しい街がありました。シビルは満月の夜になると、教会の庭で占いを行い、街人たちに未来の兆しを伝えていました。彼女は月光に照らされた緑の庭園で星の輝きを仰ぎ、水晶玉やタロットに心を通わせ、神様からメッセージを受け取っていました。


 シビルの下にはたくさんの街人が訪れました。シビルは、訪れた人々を占うだけではありません。一人一人の心に寄り添い、悩みを分かち合いました。そして占われた未来にどんなに困難が待ち受けようと、シビルは明るく道を示してくれるのです。


 彼女の占いで、毎日が変わった人は後を絶ちませんでした。街の人たちは彼女敬い、慕いました。


 しかし、シビルには一つ特別な決断がありました。彼女は自分自身を、決して占わないのです。


 ある日、隣の街に住む占い師のダーラがシビルを尋ねました。「なぜあなたは自分の占いをしないのですか」


 シビルは微笑みながら答えました。「私の占いは街の人のためのものです。だから、私は街人たちの未来を占うのです。もし私が自分の未来を知ってしまうと、自分の運命を閉じ込めてしまうかもしれません…」


 ダーラは再び問いました。「でも、あなたが本当に他人の未来を変えることができるなら、自分の未来も同じように変えられるのではないでしょうか」


 シビルは真剣な顔つきで応えました。「もし私が占いの力で自身の未来の運命を変えてしまうなら、私はどんどんそれに流されてしまうでしょう。私はそれを心から恐れているのです。」


 明くる朝、それを聞いたダーラは教会の庭に街人たちを集めて、皆の前でシビルのことを占いました。


 「何ということだ。彼女の左手に、他人の運命を操つる魔女の杖が見えます。」


 街人たちはシビルを恐れて非難しました。ついに彼女は闇に投獄されてしまいました。


 牢獄の中でシビルは幾人もの囚人と出会いました。そして街の暮らしと同じように一人一人を真摯に占い、獄中の人たちに微かな希望を与え続けたそうです。




                                                 

                                        written by Joji George Imataka

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